そして、いよいよ決勝戦。テーマは前菜と肉料理だ。食材は自ら持ち込むのも可能だが、ロピアさんが用意した食材を使うのが原則。用意される食材は知らされていないため、参加者たちは即興性も求められるというわけだ。
「厨房に立つあちらの立場になればドキドキだけど、こちらの立場だとワクワクしますね」と日髙シェフも2人の対決を楽しみにしている様子。制限時間は40分。葉山さんと伊藤さんの最後の戦いがスタートした。
葉山さんの前菜は「ランプ肉のタルタルトレビス、チコレ、イチジク、バルサミコソース」、メインは「ラム肉のローストトマトとの相性の可能性」。一方の伊藤さんの前菜は「秋鮭のコンフィマスカルポーネとヨーグルトのソース柿のコンポート添え」、メインは「牛ランプ肉のロースト黒胡椒ソース」だ。
そして、いよいよシェフたちの実食が始まる。シェフたちからは細かな質問が矢継ぎ早に飛び、関心の深さが読み取れる。
結果、初代チャンピオンに輝いたのは、満場一致で葉山暢人さんとなった。勝敗を決したのは、火の通し方。また、日高シェフは「判断の基準になったのは、テーマ食材のなかでいかにひと皿として完成させるかというところでした。ひと皿のなかでもプラス点、マイナス点をちょっとずつ足していったときに、トータルで葉山さんのほうが良かった。でも、お二人の料理をレストランで食べてみたいな、と思いました」と2人の労をねぎらった。
最後に葉山さんは「自分の料理をもう一度見直す機会をいただきました。どうもありがとうございました」と挨拶。笑顔を見せた。
対決終了後、ロピアさんはこう話す。
「僕は『料理の鉄人』を見て、料理人を目指しました。料理人が働く姿って、本当にカッコいいんです。それを多くの人たちに見てもらいたくて、この企画をどうしても実現させたかった。実現できてよかったです」
text Shoko Yamauchi photo sono(bean)
本記事は雑誌料理王国319号(2021年12月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は319号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは、現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。