編集長の野々山が、料理王国6月号(5月6日発売)の見どころを、編集こぼれ話として紹介。特集はボーダレスイタリアン。オステリア デッロ スクードの小池シェフは、本場で研鑽を積んだパスタ名人。本当に美味しいパスタの味の秘密とは?
「パスタはイタリア料理のアニマ(魂)である」で始まるフィレンツェ在住のジャーナリスト池田愛美さんのパスタに関する説明は、なるほどと思わず唸るほどの説得力。ぜひ、本誌でご覧ください。
僕が料理雑誌を初めて手がけた昭和の時代、今から40年以上前の料理本にはパスタという表現ではなく、スパゲッティという表記が一般的でした。作り方は、茹で上がった麺を水で晒して・・・というもの。笑い話の様ですが、一部、ホントの話です。パスタは、麺だから、蕎麦やうどんの作り方と同じ扱いだったんですね。イタリア帰りの料理人も当時は少なく、今のようにピッツァやパスタがどこの店でも食べられる時代ではありませんでした。
では、現在の日本にたくさん出来たパスタの店の味はどうか? 本場イタリアとはだいぶ違った味の店がたくさんありますが、それはラーメンが本場中国の味と違った進化を遂げて日本のラーメンが、今や世界的なブームになっていることを考えると、パスタも日本式が世界を席巻する日も近い? いえいえ、なかなかそうはいかない様です。イタリアで食べるパスタは本当に美味しいですから。
小池シェフの詳しい経歴やお話は本誌に譲るとして、撮影当日のお話を少し。この日のパスタ4種類は全て生パスタ。前日から寝かせていたという生地に手早く味を馴染ませていきます。イタリアでは、ロングやショートではなく、ミドルサイズのパスタが多いとのこと。豆が入るといい出汁が取れるのでよく使うそうですが、缶詰でも、日本はサラサラの物ばかりなのに対し、イタリアではドロドロのものが多い。日本人で豆料理が嫌いな人はお腹いっぱいになるから嫌だという。ノルウェー産のタラ、大西洋のタラは美味しいのでよく使うとのこと。それら、料理の手を動かしながら語られることは、イタリアと日本の素材感の違いでとても興味深い物ばかりでした。
小池シェフは、撮影中ずっと「全部茶色ですから」と郷土料理に関して語ってくれました。豆や肉を煮込んで仕込むので、どうしても茶色になってしまうそうで、全部同じ様な色になって、あまり変わらなくてすみません、ということでしたが、丁寧に作られた生パスタは、それぞれに食感が違い、今まで食べたパスタの中ではダントツに美味しかったです。
現地の味を忠実に再現しようとしながらも、日本のオステリアとしての格式も大切に。いつも「ジタバタしています」とのこと。イタリア20州から選んだ1州をテーマにした郷土料理のコースを3〜4ヶ月のサイクルで提供している小池シェフの、全部茶色だけど本当に美味しいイタリアの味をぜひ味わいに行ってみてください。
ということで、料理王国6月号は丸ごとイタリアン号。全部茶色の小池シェフのパスタ料理をはじめ、アート作品のような料理写真は、書店でぜひご覧ください。デジタル版料理王国でもご覧いただけます。