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神保佳永シェフの新店「JINBO MINAMI AOYAMA」南青山にOPEN

JINBO MINAMI AOYAMA

この春、イタリア料理界の“野菜の魔術師”こと神保佳永さんの新店がオープン。その料理をいち早く体験したレポートをお届けする。

この4月29日、南青山の閑静な一角にOPENしたのがイノベーティブ・イタリアンの新店「JINBO MINAMI AOYAMA」だ。オーナーシェフ神保佳永さんは、調理学校卒業以来一貫してフランス料理の道を歩んできたのだが、イタリア料理のシェフだった亡き父上の遺志を継ぎ、イタリア料理に転向。2010年からは野菜を中心としたイタリア料理店「HATAKE AOYAMA」総料理長として活躍してきたが「料理人としての自分にできることでもっとお客様を喜ばせたい」という思いが結実、念願のイタリア料理店を開店したのだ。

神保佳永さん
神保佳永さん

神保シェフが常に念頭におくのは「料理は食材ありき」というモットー。イタリア料理に関して言うならば、食材が全てといってもいいほどで、何よりも食材とその旬が最優先されるのが常だ。神保シェフは生産者との関係を重要視しており、日本各地の生産現場を訪ねる旅をはじめてすでに17年。畑に直接足を運ぶことで土の様子や生産者の人柄、こだわりもダイレクトに感じられ、最後に野菜を食べれば大抵のことが見えてくるという。現在つきあいのある野菜の生産者は20人、他にも魚介や肉、調味料などの生産者をあわせると50人にもなるという。「JINBO MINAMI AOYAMA」では、そうした日本全国の優秀な生産者たちの思いを凝縮させるべく基本的に料理は日替わりで、昼は6皿7,480円、夜は11皿17,000円のコースそれぞれ1本のみ。

神保シェフの新店「JINBO MINAMI AOYAMA」の内観
神保シェフの新店「JINBO MINAMI AOYAMA」の内観

イタリアでも食材を無駄にしないおまかせコースは「OMAKASE」と言う日本語とともにかなり浸透してきているが、イタリア料理を「食材ありき」で考えるのであれば、すべておまかせ、いわゆる白紙委任状をシェフに託すのが最良の方法であることは間違いない。また神保シェフは食材を最大限生かすため「水」にも注目しており、ブロードなどの基本出汁からテーブルウォーター、コーヒーやお茶などに北アルプスの天然水を使用している。ミネラルを多く含む長野県大町市の原水は、週に2回直接レストランへと運ばれ神保シェフの手によって料理へと昇華するのだ。

アミューズ「新玉ねぎ 蕗の薹 リンゴ」
アミューズ「新玉ねぎ 蕗の薹 リンゴ」

コースの料理をいくつか紹介すると、アミューズは「新玉ねぎ 蕗の薹 リンゴ」。旬の新玉ねぎとフキノトウのコンフィ、そしてリンゴのジャムを一口サイズのパンの上にトッピング。仕上げにはエディブルフラワーとパンチェッタ、フキノトウ特有のほろ苦さと甘み、塩味のコントラスト。実にイタリア的なドルチェ・サラートでコース料理はスタートする。

アミューズ「新玉ねぎ 蕗の薹 リンゴ」
「発酵トマト 水牛のモッツァレッラ いしる バジル」

「発酵トマト 水牛のモッツァレッラ いしる バジル」は日本のエッセンスをプラスした発酵カプレーゼ。プーリア産のモッツァレッラには二日発酵させた糖度が非常に高いトマトをあわせる。奥深い酸味と甘み、これにバジリコとトマトのジュレ、そしてめぎすを使ったいしるを加えてある。南イタリアの特産魚醤コラトゥーラよりも風味が際立つ、いしるが実によくあっている。

シグネチャーディッシュ「バーニャカウダ 培う互いの絆」
シグネチャーディッシュ「バーニャカウダ 培う互いの絆」

次に登場したのが「JINBO MINAMI AOYAMA」のシグネチャーディッシュ「バーニャカウダ 培う互いの絆」。バーニャカウダとは本来北イタリア、ピエモンテ州の郷土料理でニンニク、アンチョビ、オリーブオイルで作った熱々の(カウダ)ディップソース(バーニャ)にセロリやニンジン、フェンネルなどの野菜をつけて食べる前菜だ。神保シェフは30種類もの野菜をぬか漬け、ボイル、ソテー、スモークと様々な調理で野菜本来の味を引き出し、ジャガイモを加えたバーニャカウダのスプーマが添えてある。これにテーブルで葉野菜のサラダとチュイル、そして大葉と太白ごま油の熱いソースをかけて仕上げる。それぞれの野菜が異なる食感と味わい、風味を奏でているがそれらの際立つ個性をまとめるのがジャガイモの甘みを感じるオリジナルのバーニャカウダソースだ。

パスタ料理「グリーンアスパラガス 気仙沼フカヒレ 雲丹」
パスタ料理「グリーンアスパラガス 気仙沼フカヒレ 雲丹」

「グリーンアスパラガス 気仙沼フカヒレ 雲丹」は一口サイズの可憐なパスタ料理。栃木県産のアスパラガスは穂先、芯、根元とそれぞれ異なる調理法で使い、舌に優しい細めのスパゲッティーニにはフカヒレがあえてある。このフカヒレが実にいいアクセントとなっており、アスパラガスの穂先の食感やウニの甘みとの相乗効果が実にいいハーモニー。メインの肉料理は「熟成あか牛 新ジャガイモ 花ズッキーニ タジャスカオリーブ」で熊本県産あか牛の外もも肉を二週間熟成させ炭火焼。フレッシュな肉汁をしっかりと閉じ込めた、じゃがいものコンフィ、焼き芋、そして黒にんにくを思わせるタジャスカ種オリーブのペースト。

デザート「ヴァローナマンジャリトルタ 鶯嬌 エディブルフラワー エキゾチック」
デザート「ヴァローナマンジャリトルタ 鶯嬌 エディブルフラワー エキゾチック」

最後のデザート「ヴァローナマンジャリトルタ 鶯嬌 エディブルフラワー エキゾチック」がまた素晴らしかった。最初にチョコレートのトルタが運ばれてきたのだが、最後に液体窒素で凍らせたエディブフラワーを神保シェフ自らがトッピングして仕上げてくれたのだ。瞬間冷凍することで花の美しい色彩を閉じ込め、チップスのような軽い食感がヴァローナ特有の酸味が心地よいトルタと実にいいコンビネーション。マンゴーやパパイヤをおもわせるエキゾックフルーツ、デザートに使ったウイキョウの香りもチョコレートと好相性だった。

「バーニャカウダ」に代表される神保シェフの料理は、日本各地の生産者を食材を通じて訪ねるフードエクスペリエンスの旅である。北は北海道から南は鹿児島まで、コースには50種類もの食材が登場する。それは神保シェフの食材探しの旅の追体験でもあり、皿の上で日本を旅するのは実に贅沢なひとときではないだろうか。

JINBO MINAMI AOYAMA

JINBO MINAMI AOYAMA
東京都港区南青山 4-11-13 サンライトヒル青山 1F
TEL 03-6804-5955
11:30〜15:00 (13:30 LO) 、17:30〜22:00 (20:30 LO) 要予約
日・月休
https://jinbo-ma.jp

text・photo:池田 匡克

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