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食材のうま味は増すために、自由水を減らす


酵素の働きでうま味成分が生成される

「乾燥させた肉や魚、野菜などが興味深いのは、味が濃縮されるだけでなく、加工段階でうま味が増し、よりおいしく生まれ変わることです」と畑江さんは言う。これは、酵素の働きで元の状態にはなかったうま味成分が生成されるため。
「この酵素反応は、細胞が破壊されることで起こります。干物は干す間に水分が抜け、細胞がダメージを受けることで酵素が働き、うま味成分であるイノシン酸が増えるのです」

さらに、シイタケにいたっては、乾燥させることで生のときにはなかったグアニル酸が、100グラム中150ミリグラムも生成されているのだ。
「ただ、面白いことにこのグアニル酸は、乾燥したままではうま味を発揮しません。水で戻したり、煮たりしている間に酵素が働くことで、うま味を発揮するようになるのです」

しかも、下の表でも分かるように、シイタケのグルタミン酸は、乾燥によって、15倍強にまで増加。トマトもグルタミン酸の量が、乾燥させることで4倍以上にまで増えている。

また、生ハムのグルタミン酸量も、塩蔵、乾燥、熟成が進むにつれて、グングン増加。乾燥時でも、100グラム中のグルタミン酸量は、未熟のときのおよそ150倍。熟成後ともなると、300倍を優に超えているのだ。

水分が多い食品のほうが味を強く感じやすい

生ハムの熟成によるグルタミン酸量の変化
資料提供:NPO法人うま味インフォメーションセンター

ここでちょっと味覚と水の関係を考察してみよう。じつは、食品に含まれる水分量の差は、味覚にも影響しているのだ。
「例えば、練りようかんと水ようかん。砂糖の割合は練りようかんが約60%で、水ようかんは30%以下です。
でも、どちらも甘味がちょうど良いと感じます。味覚は、舌にある味蕾という器官に、水や唾液に溶けて味を感じさせる呈味物質がぶつかることで感じるものです。ですから、水分が多く、流動性が高いもののほうが味蕾にフィットするので、水ようかんは糖分が30%以下でも甘いと感じるのです」と畑江さんは説明する。

乾燥させることによって増す食物のうま味。食品中の水分量によって変わる味覚。水分と味わいの関係は、なかなか奥が深い。

天日乾燥 と 温風乾燥

スルメイカの味成分の変化

乾燥させることで増えるうま味。
それは、乾燥の仕方によっても異なるのだろうか。
畑江さんたちは、天日乾燥と温風乾燥の2つの方法でスルメをつくり、乾燥方法によるエキス成分の違いを調べた。

乾燥の方法

天日乾燥は、海浜の風通しのよいところに日中8時間乾燥。夜間は、冷蔵庫(1日目のみ)あるいは屋内に取り込み保管。戸外の温度は1〜6度。屋内の温度は8度であった。結果、124時間かけて水分76・2%の生イカから水分33・4%のスルメが完成した。

一方、温風乾燥は室温32度に暖房し、送風機を設置した乾燥室で日中乾燥させ、夜間は暖房を止め、室内(10度)に放置。96時間かけて、水分75・8%の生イカから水分31・2%のスルメをつくった。

考察

天日乾燥、温風乾燥いずれでも、エキス成分が2・3〜2・4倍に濃縮。官能検査では、どちらの方法でも生イカよりもスルメのほうがうま味が強いと判断された。また、天日乾燥のほうが、温風乾燥より甘味とうま味が強かった。理由は、製造時の温度が関係していると考えられる。天日乾燥では、気温が屋内外とも10
度に満たない。低温のため、うま味成分のひとつであるアデニル酸やイノシン酸
の減少が少ないこと、遊離アミノ酸総量が増加することの2点が考えられる。とくに遊離アミノ酸総量の増加は、低温だったため、メイラード反応によるタウリンやプロリンの減少が抑えられた可能性も考えられた。

この実験は12月に行ったが、製造季節を真夏にすれば日中の気温は温風乾燥の32
度より高くなるので、天日乾燥でもメイラード反応などが進み、温風乾燥とエキス成分の差は小さくなることが予想される。

函館では、経験的に11月下旬、海浜の風通しのよい小屋で天日乾燥した製品がもっともおいしいとされている。これは、おそらく厳冬の低温が影響しているのだろう。本実験は、函館で知られているスルメづくりの経験則を実証するものといえる。

本記事は雑誌料理王国285号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は285号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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