2022年「世界のベストレストラン50」の発表イベントがロンドンにて開催され、日本からは4店がランクインした。また世界1位は、コペンハーゲンのゲラニウムが獲得。北欧勢の強さをあらためて示した。
今年で20年の節目を迎えた「世界のベストレストラン50」。日本のレストランの50位以内への初登場は、2009年の「ナリサワ」だった。それから13年。今年は過去最高の4店舗がランクインするという快挙を成し遂げた。
その4店は、以下の通り。
20位 傳(東京)
30位 フロリレージュ(東京)
41位 ラ シーム(大阪)
45位 ナリサワ(東京)
傳(20位)は、長谷川在佑氏が率いるチームによる圧倒的なホスピタリティが最大の特徴の店。今年3月に発表された「アジアのベストレストラン50」で1位を飾ったことは記憶に新しい。今回のランキングでも、アジア圏1位の栄誉に輝いた。
フロリレージュ(30位)は、昨年の39位から大幅にランクアップ。川手寛康氏の進化への挑戦は、多くのゲストを惹きつけるとともに、国内外の料理人からも強い信頼、共感を集める。世界でその実力が認められ、存在感を確実に増している。
ラシーム(41位)は、初の50位以内ランクイン。昨年の76位から一気に駆け登った。なお関西のレストランがこのランキングで50位以内となるのは初めて。「日本のガストロノミーは東京だけではない」という重要なメッセージを、高田裕介氏が世界に伝えてくれた。
ナリサワ(45位)は2009年に日本勢として初のランクインを果たして以来、実に毎回50位以内を維持する。オーナーシェフの成澤由浩氏は、日本のイノベーティブなレストランのレベルの高さを世界に示し続け、かつ今も第一線で活躍する稀有な存在。
また、51〜100位では以下の2店がランクインした。
59位 茶禅華(東京)
82位 セザン(東京)
一昨年にミシュランの三ツ星を獲得してますます充実度を高める川田智也氏の茶禅華(59位)も、昨年のオープン早々から高い評価と人気を獲得しているダニエル・カルバート氏のセザン(82位)も、まさに登り調子のレストラン。今後のランクアップが期待される。
2022年のランキングのトップに輝いたのは、デンマークの「ゲラニウム」。2位は、ペルーの「セントラル」という結果となった。
北欧も南米も、現代ガストロノミーにおける影響力の発信地である。その両エリアで、今まさに「旬」として活躍するのがゲラニウムのラスムス・コフォード氏と、セントラルのヴィルヒリオ・マルティネス氏だ。この2人の率いるレストランがワンツーを飾ったのは、順当な結果だといえるだろう。
コフォード氏は若い時にボキューズドール(世界的なフランス料理コンクール)で優勝した経験があり、技術は盤石。そこに北欧らしい研ぎ澄まされた感性、独創性を加えた料理が特徴だ。またゲラニウムは、今年から肉料理の提供を停止するなど、独自路線を邁進。ミシュラン三ツ星店でありながら柔軟に変化し、攻め続ける姿勢でも注目と評価を集めている。
一方のマルティネス氏は、ペルーという国の多様性、なかでも多彩な生態系を料理で表現するシェフ。生物学、歴史学、社会学などの専門家と共同研究を行い、そのための研究所を設立するなど、好奇心、行動力、そして自分のルーツを表現することに対する情熱に抜きん出た料理人だ。
ちなみに昨年はノマ(デンマーク)が1位で、2位がゲラニウム。毎年1位のレストランは“殿堂入り”し、翌年以降はランキングに参加しないルールなので、ノマが抜けた後の1位の座をゲラニウムがしっかりと手に入れた形だ。やはり北欧勢は強い、と思わせる結果だった。
その一方で、今、あらためて南米を後押しする風が起きているのも事実。今回50位以内に南米からは8店のレストランがランクインし、そのうち2店が10位以内に位置している。来年以降の南米勢の活躍にも注目したい。
※今年のランキング
https://www.theworlds50best.com/list/1-50
text:柴田泉