2022年10月25日、東京広尾にあるフランス大使公邸にて、第7回パテ・クルート世界選手権アジア大会決勝の授賞式が開催されました。昨年はコロナ感染防止のため協賛企業、法人会員、アジア大会審査員のみの参加による壮行会のみが行われましたが、今年は従来の規模での開催が実現しました。
開会の挨拶ではフィリップ・セトン フランス大使が「シャルキュトリは私たちの食文化の根幹にあたるものであり、ガストロノミーの中心要素。特にパテ・クルートは高度なノウハウが凝縮された料理です。日本ではまだまだ知られておらず、その知名度の向上のためにも今まで以上に努力を続けていきたい」と語りました。
2015年の初回大会から審査に携わっているアンドレ・パッション審査委員長は「回を追うごとに作品がレベルアップし、同時に審査も難しくなる傾向にあります。今回は特に評価が難しく、どの作品も差はほんの僅か。審査が大変だったとはいえ、特別なひとときを楽しむことができました」と総評を述べました。
フランス語で肉の加工品を意味するシャルキュトリの中でも、フレンチガストロノミーを象徴する伝統的な存在パテ・クルートの技術を競う国際コンクール。2009年に初開催され、今やフランスの料理業界における一大イベントとして注目を集めています。作品の評価基準はファルス(詰め物)の構成、パテ全体の見た目、カットした断面の美しさ、そして何よりも味が決め手となります。
7回目となる今回は、64名のエントリーのうち12名を決勝に選出。厳正な審査のもと、前回の決勝選出を経て原 和孝さん(株式会社ホテル日航福岡 調理部宴会調理課)が念願の優勝者に選ばれ、第2位の塩見隆太郎さん(神戸北野ホテル)とともに12月2日にリヨンで開催される世界大会に挑むことになりました。
また、前回の世界大会へ出場して第3位に輝いた中秋陽一さん(ア ターブル)が第3位、第4位には土肥秀幸さん(ラメゾンドゥグラシアニ神戸北野)が選ばれました。
パテ・クルート世界選手権アジア大会の上位入賞者は、これまで世界大会で優秀な成績を収めていることで知られています。そのレベルは年々アップしており、2017年、2019年、2021年の過去3回の世界大会で日本人がチャンピオンに選ばれています。
この日は、2021年の世界大会チャンピオンである福田耕平さんも挨拶し、「今年の世界大会はアジア大会決勝から約1ヶ月という短い期間で作品をブラッシュアップしなければなりません。まずは、キッチンや食材の手配など日本とは違う環境を想定して、しっかりしたレシピを作り上げることが重要です」と、経験者としてのアドバイスを述べました。
また、福田さん自身が多くの人に助けられて結果を残すことができたと言い、「日本人の上位入賞の流れがこのまま続くよう、皆さんもぜひ、世界大会に挑戦する2名のサポートをお願いします。過去に良い結果を残しているシェフたちは、3回、5回と何度も挑戦している。今回授賞できなかった人も諦めずに挑戦し続けてほしいと願っています」と温かいエールを送りました。
優勝 原 和孝さん(株式会社ホテル日航福岡 調理部宴会調理課)
第2位 塩見隆太郎さん(神戸北野ホテル)
第3位 中秋陽一さん(ア ターブル)
第4位(T-FAL賞) 土肥秀幸さん(ラメゾンドゥグラシアニ神戸北野)
今回の優勝者である株式会社ホテル日航福岡 調理部宴会調理課の原 和孝さんは現在40歳。パテ・クルート世界選手権アジア大会には過去3回挑戦しており、最初の2回は予選敗退。前回初めて決勝進出を果たし、4回目の挑戦となる今回ついに念願の優勝を手にしました。
——このたびは優勝おめでとうございます。今の率直なお気持ちは?
受賞の瞬間、頭が真っ白になりました。本当に嬉しいです。やはりいろんな人たちへの感謝の思いが一番強いですね。自分1人ではこのような結果は残せなかったと思います。
——勝因はどのようなところにあったと思いますか?
ホテル日航福岡の総料理長と二人三脚で挑んできました。1本を作るごとに毎回問題点や課題が露出し、まだ完璧だと思うものは作れていません。今回は予選から決勝まで4ヶ月の期間があったので、前回のブラッシュアップを突き詰めていくことができました。ギリギリのタイミングで火を入れて、乾燥を防ぐ作戦に変更したことが勝因となったのかもしれません。
——世界大会への意気込みを一言。
実はこの3日間、ほとんど寝ていないので疲労もピークに達していますが、世界大会でも必ず良い結果を出せるよう、明日からまた取り組んでいきたいと思います。
パテ・クルート世界選手権は12月2日にフランスのリヨンで開催されます。出場権を手にした日本人シェフ2名の活躍を願うばかりです。
text:田中英代