オリーブの四季 ~ONAOO公式オリーブオイル講座 オリーブオイルを識って料理に活かす 第12回~

イタリアでプロフェッショナル・オリーブオイル・テイスターを育成する公的機関ONAOOが、オリーブオイルを扱う食のプロに向けてオリーブオイルについての基礎知識、テイスティングのメソッドを公開する日本初のweb連載。第12回はオリーブの四季。

イタリアでプロフェッショナル・オリーブオイル・テイスターを育成する公的機関ONAOOが、オリーブオイルを扱う食のプロに向けてオリーブオイルについての基礎知識、テイスティングのメソッドを公開する日本初のweb連載。正しく識り、品質の良し悪し、味わいの違いを理解して料理の可能性を広げる一助を目指します。

“オイルの母”と呼ばれるオリーブの実。オリーブオイルの質はこのオリーブの実がどのような条件を満たすか、あるいはどのような状況に置かれるかによって左右される。その主だった要素は、

  • 品種
  • 土壌の管理
  • 剪定と収穫方法
  • 灌漑
  • 害虫被害の有無
  • 熟成
  • 収穫した実の管理
  • 搾油方法

こうした要素が絡み合って、香り、味わい、辛味や苦味といったテイスティングして感じることができる性質がオイルごとに異なってくる。
オリーブの生命サイクルは一年周期。12月にはほとんどの収穫を終えてオリーブの木は休息期間に入る。年が明けてしばらく後に剪定し、実をつける枝を残す。春、4月頃に花がつく。ごく小さな白い花がびっしりと無数に咲く。やがてその花の大部分は落ち、実となるものだけが残る。この花の時期は非常に重要で、この時に極端に気温が下がると花が死に、実にならない。栽培する側にとっては最も気を揉む期間だ。

冷害に合わず初夏を迎えればひと安心だが、実が成長する時期は、虫の害に気をつけなければならなくなる。オリーブにつく虫で厄介なのは、実の表面に産み付けられる虫の卵。孵化した幼虫が実の中に入り込んでしまったらおしまいで、外からはわからないうちに実が食われてしまう。そのまま収穫して搾油したオイルは、テイスティングでも虫害を被ったことがわかる、典型的な欠陥オイルの例となる。虫が卵を産む時を見極めてタイミングよく薬剤を散布しなければならないので、栽培者にとっては神経を使う時だ。
盛夏では水不足にならないように気をつけねばならない。オリーブはさほど水を必要としないが、それでも水不足は実の成長を妨げ、小さな実からは当然採れるオイルも少なくなる。1個の実から採れるオイルはその重量のだいたい20%前後で、水分たっぷりのブドウに比べればはるかに少ない。しかも近年の温暖化で夏の干ばつが頻繁に起こるようになり、収量が落ちたという話が毎年聞かれるようになっている。

秋になり、ブドウの収穫を終える頃からオリーブの実の収穫が始まる。収穫は、大きく二段階に分かれる。緑色の実がうっすらと紫色を帯び始めたタイミングでの収穫と、紫から黒に変わったタイミングでの収穫だ。前者では表面が緑と紫が混ざっている状態のものから表面は紫色だが中身はまだ緑色の状態で、この実から搾油すると、青い実特有のフルーティな香り、苦味、辛味が明らかなオイルとなる。ポリフェノールが多く含有されるのもこうしたオイルだ。
一方、熟成の進んだ実はフルーティさも熟した風味となり、苦味、辛味も穏やかなオイルとなる。搾油量は青い実の方が少なく、熟すほど増える。かつては量を確保するため、実の収穫は11月終わりから12月初めが最盛期だったが、よりフルーティで質の高いオイルが求められるようになった今では10月中旬から11月中旬と早まっている。
搾油してフィルターを通さずに瓶詰めした新オイルは10月末から11月にかけての最大の楽しみの一つ。ピリッとした辛味と青い香りが弾けるような風味はこの時期だけのご馳走である。ただ、不純物を取り除いていないため劣化が早い新オイルは遅くとも12月初めに使い切らねばならない。そして年明けからは搾油からしばらくおいて風味が安定したオイルが楽しめるようになる。

ONAOO https://onaoo.it

ひとことポイント

およそ540種あると言われるイタリアのオリーブは、その品種ごとの性質で味わいも異なる。が、基本的にオリーブは青い実のうちに収穫すれば強い香りと辛味、苦味が鮮明なオイルとなる。ただ、オイルの収量は落ちるので、生産者はどのあたりで収穫してオイルにするか、目指すスタイル(例えば、高価でストロングなオイルなのか、手頃な価格のミディアムタイプなのか)を見据えて収穫搾油の計画を立てる。オイルの性質はそのほかに搾油方法も大きく関わってくる。つまり、健康な実をどのタイミングで収穫するか、搾油方法をどう設定するか、この二つのバランスでオイルの性質は決まってくるのである。搾油機械が進歩した現在(今も進化を続けている)、搾油方法の微妙なさじ加減がオイルの風味を大きく左右するようになっている。

text・translation:池田愛美 Ikeda Manami
ONAOO所属プロフェッショナル・オリーブオイル・テイスター

関連記事


SNSでフォローする