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オリーブオイルの官能評価をするパネル・テスト、その基本 ~ONAOO公式オリーブオイル講座 オリーブオイルを識って料理に活かす 第3回~

オリーブオイルの官能評価をするパネル・テスト、その基本

イタリアでプロフェッショナル・オリーブオイル・テイスターを育成する公的機関ONAOOが、オリーブオイルを扱う食のプロに向けてオリーブオイルについての基礎知識、テイスティングのメソッドを公開する日本初のweb連載。正しく識り、品質の良し悪し、味わいの違いを理解して料理の可能性を広げる一助を目指します。

世界共通基準で行われるテイスティング

ヴァージン・オリーブオイルが食品としてどのような特徴を持つのかを明確にするため、1987年にIOC(国際オリーブ評議会)、そして1991年にEUによって官能評価の基準が定められた。その基準に基づいて評価を行うのがパネル・テスト、複数のテイスターで行うオリーブオイル・テイスティングである。この評価に加えて、DOP(原産地呼称保護)やIGP(地理表示保護)に認定されているオリーブオイルにはそれぞれの基準に基づいた評価査定も行われる。

パネル・テストでは、カポ・パネル(パネル・リーダー)の指示に基づき、テイスターの資格を持つメンバーが1グループとなって官能試験を行う。各テイスターは独立したテイスティング・キャビンを与えられ、そこには蓋を被せたテイスティング・グラスに注がれたオリーブオイルが設置されている。28度に温められたオリーブオイルを試飲し、プロファイリングシートに定められた評価項目に従ってタイプやその強弱を判定する。なお、評価にはあらかじめ決められている用語が使われる。

匂い、そして味わいで評価する

まず嗅覚検査を行う。グラスの蓋を外し、揮発性の匂いを嗅ぐことで、フルーティな香りなどポジティブな面と何らかの瑕疵によるネガティブな面を評価する。

次いで、2〜3mlほどを口に含み、舌を使って口中全体に行き渡らせ、数回空気を吸い込んで、鼻から空気を抜く。オイルと唾液と空気が混ざり合った一種のエアロゾルが口内で温められ、オイルの中の揮発性の成分が蒸発することで、より詳細な評価をすることができるわけだ。

もう一つ重要なのが、苦味、酸味、甘味、鹹味、旨味を評価する味覚検査である。オリーブオイルにはこのうち苦味のみがあり、他の4つを感じることはないが、DOPオイルの評価基準には“甘味”の項目がある。それは、超完熟の実を使用した場合に現れる特徴で、苦味のように元からの成分として存在するものではない。

もう一つ重要な“味わい”が、辛味。オリーブオイルのポジティブな特徴と捉えられており、口の奥から喉にかけての部分の末端神経を刺激し、唐辛子のような熱さもしくはミントのような冷たさとして感知されるものである。ここで誤解しないでほしいのが、時に喉が焼けるような刺激をもたらす辛いオイルがあるが、それは酸度に依るものではないということ。オイルに含まれる遊離脂肪酸は人間の嗅覚や味覚で感じ取ることはできない。この辛味は、未熟の実から抽出した鮮度の高いオイルに豊富に含まれるフェノール系物質に依るものである。

EU制定のヴァージン・オリーブオイル評価項目(プロファイリングシート)

パネル・テストで得られた評価の中央値を利用して、オリーブオイルを分類する。人間の感覚を元にしているため、数値には曖昧さがある。ゆえに分類には以下のようにある程度の幅をもたせている。

A. エクストラ・ヴァージン・オリーブオイル
ネガティブ評価は0点、フルーティ度評価は0点よりも高い
B. ヴァージン・オリーブオイル
ネガティブ評価は0点より高く、3.5点以下、フルーティ度は0点よりも高い
C. ランパンテ・オリーブオイル(非食用オイル)
ネガティブ評価は3.5点超、または3.5点以下でフルーティ度が0点

*苦味または苦味、あるいはその両方共が5点を超える場合、パネル・リーダーは官能評価結果にその旨を明記する。
*採点は0点〜10点が目安だが、通常、8点を超える評価は現れない。

ネガティブ評価項目 (日本語/英語/伊語)
・古い臭い/Fusty/Riscaldo 沈殿した油かす/Muddy sediment/Morchia
・カビ臭/Musty/Muffa 湿気/Humid/Umidità 土臭/Earthy/Terra
・発酵臭/Winey/Avvinato 酢酸臭/Vinegary/Inacetito 酸/Acid/Acido 酸っぱい臭い/Sour/Agro
・霜に当たったオリーブ(湿った木)/Frostbitten olives(Wet wood)/Olive gelate (Legno umido)
・嫌な臭い/Rancid/Rancido

そのほかのネガティブ評価
・金属的/Metallic/Metallico
・干し草/Dry hay/Fieno
・地虫/Grubby/Verme
・粗雑/Rough/Grossolano
・塩水/Brine/Salamoia
・焼けた、焦げた/Heated or burnt/Cotto o stracotto
・植物の水分、樹液/Vegetable water/Acqua di vegetazione
・茅/Esparto/Sparto
・きゅうり/Cucumber/Cetriolo
・グリース/Greasy/Lubrificanti

ポジティブ評価項目
・フルーティ/Fruity/Fruttato
・青い/Green/Verde
・熟した/Ripe/Maturo
・苦味/Bitter/Amaro
・辛味/Pungent/Piccante

D.O.P. Denominazione di Origine Protetta 原産地呼称保護
D.O.P. Denominazione di Origine Protetta 原産地呼称保護

欠点のない健康なオイルであれば、上部のネガティブ評価のところは空欄にして、下部のポジティブ評価のみ記入する。欠点があってもポジティブな評価ができるところには記入する。欠点が著しい場合はポジティブ評価ができないことも多いので、その場合は空欄。

Text : Mauro Amelio
ONAOO公認テイスター 学術部門責任者

Text : ONAOO https://onaoo.it

ひとことポイント

オリーブオイルのテイスティングに用いるグラスが青や茶色、赤などの色付きガラス製なのは、オイルの色に惑わされないため。濃い緑色のオイルは香りや味わいも強いと錯覚しやすいが、実際にイタリアのスーパーなどで売られている激安のオイルの中には、美しい緑色でも平凡な、時には劣化したものも存在する。

ONAOOのテイスター養成講座では通常、プラスチックのカップを使う。本来なら正式なグラスを使いたいところだが、1クラスに20〜30人がまとまって数十種類のオイルをテイスティングする訓練では非現実的。正式なパネル・テストではグラスを温める設備があるが、レッスンではプラカップの底を手のひらで温める。この時、蓋代わりにもう一方の手のひらを被せることもあるが、手のにおいがつく可能性もあるので、あまり推奨されていない。

text・translation:池田愛美 Ikeda Manami
ONAOO所属プロフェッショナル・オリーブオイル・テイスター

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