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パネルグループ<テイスター班>の選定 ~ONAOO公式オリーブオイル講座 オリーブオイルを識って料理に活かす 第4回~

パネルグループ<テイスター班>の選定 ~ONAOO公式オリーブオイル講座 オリーブオイルを識って料理に活かす 第4回~

イタリアでプロフェッショナル・オリーブオイル・テイスターを育成する公的機関ONAOOが、オリーブオイルを扱う食のプロに向けてオリーブオイルについての基礎知識、テイスティングのメソッドを公開する日本初のweb連載。正しく識り、品質の良し悪し、味わいの違いを理解して料理の可能性を広げる一助を目指します。

パネルグループの選定は、オリーブオイルの官能評価を行うにあたり非常に重要なステップである。1人のテイスターの評価に頼らず、グループを構成し個々のテイスターの評価を統計的に分析することで、より正確な評価を得られるからである。

パネルグループ<テイスター班>の選定 ~ONAOO公式オリーブオイル講座 オリーブオイルを識って料理に活かす 第4回~

パネルグループを構成するメンバーの選定とパネル(テイスティングによる官能評価)の実施は、パネル・リーダーと呼ばれる班長が行う。パネル・リーダーは、実際のパネルグループに必要な人数の3倍程度の候補者8〜12人(それに加えて補欠候補)を選び、まずそれぞれに面談し、これから行うテイスティングに十分な時間をかけることができるかどうか、個々人にテイスティングを行う準備があるかどうかを確認する。

次に、選別のための官能テストを行う。そのテストではあらかじめIOC(国際オリーブ評議会)によって規定されている4つの官能属性それぞれについて、少なくとも候補者の75%が認識できる、認知閾値(なんのにおいか識別できる、つまりどんなにおいか表現できる最小濃度)を定めなければならない。4つの官能属性とは、以下のオイルの欠陥を示す3つとオイルが唯一持つ味わいである。

  • 古い臭い/Fusty/Riscaldo
  • 発酵臭/Winey/Avvinato
  • 嫌な臭い/Rancid/Rancido
  • 苦味/Bitter/Amaro

テストの準備と実施はパネル・リーダーが行う。一つの官能属性は濃度によって12段階に分ける。つまり、においの強いものが1番、そこから12番まで段階的ににおいが弱くなり、10番が人間が認識できる最小濃度になるように設定する。候補者は、4つの官能属性それぞれについて4回、トータルで16回の嗅覚テストを受ける。

パネルグループ<テイスター班>の選定 ~ONAOO公式オリーブオイル講座 オリーブオイルを識って料理に活かす 第4回~

テストの方法は、においの強いものから弱いものまで段階的に並んだテイスティンググラスの列に、パネル・リーダーが抜き取った1個を正しい位置に置いて、12段階を完成させるというもの。候補者はまず抜き取られたグラスのオイルのにおいを嗅ぎ、列に並ぶオイルを嗅いで正しい位置を見つけていく。

パネル・リーダーは候補者が示した位置と正しい位置を照らし合わせ、違いを二乗して点数化する。正解であれば点数は0である。もし、正しい位置から3つ以上ずれていればその候補者は自動的に除外となる。16回のテストが全て終了したら点数を合計し、34点以下であればその候補者は適格者となる。

パネルグループ<テイスター班>の選定 ~ONAOO公式オリーブオイル講座 オリーブオイルを識って料理に活かす 第4回~

適格者となったら、ポジティブな属性とネガティブな属性両方について、その強弱を0から10の段階に識別するという訓練を行う。とりわけネガティブな属性を見極めて、EUの規定に従ってエクストラ・ヴァージン・オリーブオイル、ヴァージン・オリーブオイル、ランパンテに分類することが重要となってくる。前回説明した通り、エクストラ・ヴァージンはネガティブ属性が0点、ヴァージンは3.5点以下、それを超えるとランパンテに分類される。

Text : Mauro Amelio
ONAOO公認テイスター 学術部門責任者

ONAOO https://onaoo.it

ひとことポイント

においの強弱の段階に従って12個のグラスを正しく並べるというテストは、ONAOOのテイスター養成コースのファーストレベルの終了試験でも行われる。試験の部屋の広さにもよるが、リグーリア州インペリアにある本部では、一度に3名ほどが入室し、それぞれが自分の前に並べられた11個のグラスと抜き取られた1個のにおいを嗅ぐ。まず、抜き取られたグラスを嗅ぎ、それを記憶して、11個の中からあたりをつけて嗅いでみる。当然、においが強い場合は簡単だが、弱ければ難しい。いくつも嗅いでいると混乱してくるので少ない回数で正解を探るのが重要だ。

ファーストレベルでも生来嗅覚が鋭敏な人はトータル0点という満点獲得も十分ありえる。あまり敏感ではない人も訓練によって識別能力は上がるという。においの強弱を見極めるのはテイスティングの基礎。訓練してブラッシュアップし、そしてそれを維持していくことはテイスターだけでなく、飲食に携わる人全てにとって重要だと思う。

日本に輸入されているオリーブオイルはほとんど欠陥のない商品だが、たまにダメなオイルに遭遇することがある。一番多いのが「嫌な臭い/Rancid」と言われる酸化臭で、光に当たったり、空気に触れて発生する欠陥だ。保存の悪い生ハムの脂のにおいにも似ている。これは製造段階ではなく製造後にきちんと保管されなかった場合に起こる。

そのほかの欠陥は基本的に収穫や製造段階で生じる。「古い臭い/Fusty」や「発酵臭/Winey」とは収穫後すぐに搾油せずに放置されたオリーブが腐敗発酵することに起因する。また、現在主流の密閉式抽出ではなく、伝統的な解放プレス抽出や、機械清掃が不十分な場合に起こるのが「沈殿した油かす/Muddy sediment」のにおい。これはかなり不快で強い場合は気分が悪くなるほどである。

いずれの欠陥もそれがあるオイルは、生食・加熱に限らず料理に使うことはできない。ブショネのワインを料理に使えないのと同じで、せっかくの料理を台無しにしかねない。

text・translation:池田愛美 Ikeda Manami
ONAOO所属プロフェッショナル・オリーブオイル・テイスター

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