オリーブオイルの正しい保存と使い方 ~ONAOO公式オリーブオイル講座 オリーブオイルを識って料理に活かす 第8回~

イタリアでプロフェッショナル・オリーブオイル・テイスターを育成する公的機関ONAOOが、オリーブオイルを扱う食のプロに向けてオリーブオイルについての基礎知識、テイスティングのメソッドを公開する日本初のweb連載。第8回はオリーブオイルの正しい保存と使い方について。

イタリアでプロフェッショナル・オリーブオイル・テイスターを育成する公的機関ONAOOが、オリーブオイルを扱う食のプロに向けてオリーブオイルについての基礎知識、テイスティングのメソッドを公開する日本初のweb連載。正しく識り、品質の良し悪し、味わいの違いを理解して料理の可能性を広げる一助を目指します。

「オイルは新しいものを、ワインは熟成したものを」。イタリアで古くから言われている言葉だが、オリーブオイルは時間とともに劣化していくことをよく表している。つまり、新鮮なうちになるべく早く使い切るのが鉄則だ。

一般的には賞味期限内に消費することが奨励されているが、オリーブオイルならどれでも賞味期限さえ気を付けていれば良いということではない。例えば品種によっては、比較的長い期間、安定した風味を維持するものもあれば、劣化の早いものもある。また、フルーティな香りや苦味、辛味の強いものは、デリケートなものに比べて風味が長持ちする。いずれにしても、正しい保存の仕方を守らなければ、風味や抗酸化力も落ちてしまうことは間違いない。

まず、保管場所では光の直射を避ける。日光だけではなく電灯の明かりも避けること。光を浴びるとオリーブオイルに含まれるクロロフィルが光合成を起こし、酸化の原因になるからだ。そして、保管場所の温度は12〜18℃に。冷蔵庫では冷たすぎ(室温に戻す、冷やすを繰り返すと劣化が早まる)、高温下では酸化が進みやすい。そして、瓶の蓋はきちんと閉めること。この三つが、オリーブオイルの抗酸化力の低下を防ぐ基本だ。そして、一度開栓したら、なるべく早く使い切る。オイル用注ぎ口を瓶につけたままにはしないこと。できるだけ空気の混入を防ぐということを頭に入れておくといい。

オリーブオイルの味わいについて、しばしば起こる誤解についても気をつけたい。オリーブオイルの品質を示す成分分析の指標の一つである「酸度」は、エクストラヴァージン、ヴァージン、ピュアなどとオリーブオイルのクラス分けを左右する重要な数値だが、それを味として人間が感知することはできない。搾油したばかりのオリーブオイルは、強い刺激(とりわけ喉を刺激する辛味)を感じさせることがあるが、それを高い酸度によるものだというのは間違いである。

もう一つ注意したいのは、コレステロール値の上昇を抑え、健康を保つために油脂の摂取を極力抑えるというのは間違ったダイエット方法だということ。油脂の摂取を極端に減らすと、悪玉コレステロールだけでなく善玉コレステロールも下げてしまう。健康維持のためには適度に油脂を摂取する必要があり、より良い影響をもたらす油脂を選ぶことが重要なのである

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ひとことポイント

オリーブオイルの保管は、使い手として一番気をつけなければならないポイントである。熱源から遠ざけること、光に当てないこと、移し替えをしないことは鉄則だ。料理の仕上げに使うためディスペンサーに移す場合も必要最小限に抑えたい。可能な限り、元々のボトルから直接かけることが望ましい。

写真の左はクオリティの高いオイルのメーカーでは必ず採用している中栓で、継ぎ足しは全くできない。右は量産オイルに多いタイプの中栓。
写真の左はクオリティの高いオイルのメーカーでは必ず採用している中栓で、継ぎ足しは全くできない。右は量産オイルに多いタイプの中栓。

イタリアのレストランでは食卓にオリーブオイルのボトルを置くことがかつては当たり前だった。そういうオイルは時に「使わない方がいいかも」と思うほど劣化したものもあった。ところが、ボトルへのオイルの継ぎ足しを禁じる法律が2014年に制定され、レストランでは継ぎ足しのできない(antirabboccco)タイプの中栓を使用したボトルのオリーブオイル(エクストラヴァージン、ヴァージン)を提供することが義務付けられた。(厨房で使うオイルについてはこの限りではない。)以来、レストランで“ひどい”オイルに遭遇することはほとんどなくなった。
質の落ちたオイルは料理を台無しにしてしまう。けして安くはないオリーブオイルだからこそ、良い状態を保ちたいものである。

text・translation:池田愛美 Ikeda Manami
ONAOO所属プロフェッショナル・オリーブオイル・テイスター

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