正しいオリーブオイル・テイスティングの方法を身につける ~ONAOO公式オリーブオイル講座 オリーブオイルを識って料理に活かす 第7回~


イタリアでプロフェッショナル・オリーブオイル・テイスターを育成する公的機関ONAOOが、オリーブオイルを扱う食のプロに向けてオリーブオイルについての基礎知識、テイスティングのメソッドを公開する日本初のweb連載。正しく識り、品質の良し悪し、味わいの違いを理解して料理の可能性を広げる一助を目指します。

パネルのようなオフィシャルなオリーブオイルのテイスティングは、定められた手順に沿って行うことは、これまでの連載で解説してきた。室温がコントロールされた部屋で、パーティションで区切られた半個室にオイルを28度に温める機器と専用のグラスを用意しなければならない。

しかし、オフィシャルではない場合、例えば、テイスティングの講習や、テイスティング体験の場ではもっと“緩い”ルールでも良い。設備がなくともオリーブオイルのさまざまな性質を見極めることができる、もっとシンプルな方法を紹介しよう。

1. 小さなグラスに大さじ1ほどのオリーブオイルを注ぐ。このグラスはプラスチックカップでも良い。重要なのはグラスやカップに余計な匂いがないこと。紙コップは紙の匂いがすることがあるので避けたい。

2. グラスを手のひらにのせて温める。温めることで揮発性の香りが立ち上る。

2. グラスを手のひらにのせて温める。温めることで揮発性の香りが立ち上る。

3. グラスを手のひらで包むように持ったまま鼻を近づけて、神経を集中させて良い匂い、不快な匂いの両方を分析する。

4. 空気とともに軽くすするようにオイルを口に含む。口の中にさらに空気を吸い込みながら匂いが鼻に抜けるようにする。

5. 空気を吸い込むのを止め、舌を口蓋に触れるようにゆっくりと動かす。

6. 口を軽く開けて再び息を吸いながら舌を5と同様に動かす。

7. オイルを吐き出す。その後も、舌を動かしながら、残る余韻を評価する。

テイスティングでは、オリーブオイルの官能分析に用いられる専用の語彙で長所と短所を見極めることが重要なので、初めてのテイスティングからそうした語彙を使って表現することに慣れていくと良い。また、自分が感じた結果を他の人に説明することも非常に有効である。専用の語彙だけでなく、通常のコミュニケーションと同じように平易な言葉で感想を言い合うことも大切だ。

オイルの中に変な匂いを見つけられることが、テイスティングの力を示すことだと考える人もいるかもしれないが、目的はそこではない。オリーブオイルという食品が持つ本来の特質を見極め、その良さを知って、使いこなすことが、テイスティングの目的なのだ。

正式なテイスティングの場合は、以下のようなルールも守らなければならない。
・テイスティングの前、少なくとも30分はタバコを吸ってはいけない。
・匂いの強い香水、石鹸、化粧品などは使わない。
・テイスティングの前、少なくとも1時間は食べ物を口にしない。
・体調、気分が万全で、テイスティングに影響しないことを自己確認する。
以上は、非公式のテイスティングや個人的なトレーニングの際にも適用したい、テイスティング心構え基本事項だ。

ONAOO https://onaoo.it

ひとことポイント

ONAOOのテイスター養成講座でのテイスティングでは、専用のプラスチックカップを使う。市販のエスプレッソコーヒー用のプラスチックカップより口径が大きく、背が低いのが特徴だ。しかしこれは一般に入手できないので、エスプレッソコーヒー用で代用してもいい。
大切なのは温めること。特に気温の低い時期は手のひらでカップの底と側面をしっかりと温める。カップの上にもう片方の手を被せて揮発する匂いを閉じ込めるという方法もあるが、手の匂いや、それまでにテイスティングしたオイルの匂いが邪魔をする可能性もあるので、余計な匂いがないかどうか都度確認をする。
鼻で匂いを嗅ぐのは誰もがやったことがあるので問題はないが、ポイントは口に含んでからのテイスティング。すするようにして空気を口に引き込む動作はちょっと練習が必要だ。手取り足取り教えてもらえるわけでもないので、自分なりにトレーニングして身につけるほかない。
正式なテイスティングでは口に含んだオイルは吐き出すが、講習や個人的なトレーニングでは飲み込んでも構わない。いずれにしても嗅覚・味覚とも次第に疲れてくるので、リセットが必要になる。かつては青リンゴをかじることもあったが、オイル以外の食品をテイスティングの最中に摂取することは勧められないので、今は常温の水を飲むのが一般的。
また、オイルの試食ではパンやクラッカーにかけて提供することがあるが、オイル本来の味がわからなくなるので、テイスティングではオイルのみを味わうのが鉄則である。

text・translation:池田愛美 Ikeda Manami
ONAOO所属プロフェッショナル・オリーブオイル・テイスター

関連記事


SNSでフォローする