カポ・パネル<パネル・リーダー>の役割 ~ONAOO公式オリーブオイル講座 オリーブオイルを識って料理に活かす 第5回~

イタリアでプロフェッショナル・オリーブオイル・テイスターを育成する公的機関ONAOOが、オリーブオイルを扱う食のプロに向けてオリーブオイルについての基礎知識、テイスティングのメソッドを公開する日本初のweb連載。第4回はパネル・リーダーの役割について。

イタリアでプロフェッショナル・オリーブオイル・テイスターを育成する公的機関ONAOOが、オリーブオイルを扱う食のプロに向けてオリーブオイルについての基礎知識、テイスティングのメソッドを公開する日本初のweb連載。正しく識り、品質の良し悪し、味わいの違いを理解して料理の可能性を広げる一助を目指します。

これまで2回にわたって、カポ・パネルつまりパネル・リーダーという言葉に触れてきたが、今回はこのパネル・リーダーについて、その役割と適性についてより詳しく解説する。

パネル(テイスティンググループ)とパネル・リーダーについては、IOC(国際オリーブ評議会)が定めるオリーブオイル官能テストにまつわる規範に明記されている。
パネル・リーダーは、すでに説明したとおり、8人〜12人で構成されるパネルをまとめる責任者である。その仕事は、グループのトレーニング、定期的な能力のチェック、IOCの規定に準拠した活動を証明する書類の作成と保管に及ぶ。
さらに、パネル・リーダー自身にもさまざまな規範が定められている。まず、リーダーになるには、パネルの構成員としての2年以上の実績が必要である。

そして、パネルで試飲するオリーブオイルについての広範で詳細な知識と経験が求められる。なぜなら、オリーブオイルの官能特徴(香りや味わい)はさまざまな要因によって変化するからだ。要因とは、気候風土、その年の天候、品種(クルティヴァル)、栽培方法、害虫被害の有無、収穫方法、保管状況、搾油所への運搬状況、搾油方法、搾油したオイルの保管状況などである。こうした要因の中には、年によって簡単に変わるものもあり、同じ畑であっても年によって全く異なる結果をもたらすことがある。パネル・リーダーにこれら要因についての知識があればあるほど、パネルを正しく運営することができる。
また、パネル・リーダーには、官能テストの結果の集計分析を正しく行う能力も必要だ。テイスティング対象となっているオリーブオイルを評価分類するには、専用に調整されたエクセルに結果を入力するわけだが、個々のデータがどのように処理され、なぜそのように処理されるのかを理解しておく必要がある。ちなみに、エクセルの使用はIOCによって定められたルールである。

そのほか、パネル・リーダーに課された役割としては、

・サンプルオイルの正しい受理
・テイスティングの前後にオイルの保管に関する書類の作成管理
・パネルを行う部屋の衛生及び環境整備
・テイスティングオイルに英数字のコードをつける(個々のオイルについて名称その他を知っているのはパネル・リーダーのみ)
・個々のテイスターが精神的肉体的にパネルに参加できる状況にあるかの確認

なかでももっとも重要なのは、個々のテイスターのテイスティング能力及びグループとしての能力を見極めることである。

ONAOOの副代表でテイスター養成講座の責任者であるマルチェッロ・スコッチャは、パネルにおいてはパネル・リーダーを務める。パネルについての実際的なところを尋ねた。

Q. 1年間にどのくらいパネルテストの機会がありますか?
A. テイスターによりケース・バイ・ケースです。私や同程度のスキルを持つ同僚では、年間に200〜300件のパネルテストの依頼があります。

Q. パネルテストの依頼はどこからくるのでしょう?
A. ほとんどは生産者からです。規模の大小に関わらず、さまざまな生産者から依頼があります。また、消費者、ジャーナリスト、食品販売の現場からの依頼もあります。

Q. パネルテストはオンラインでも可能ですか?
A. 正式なパネルテストはオンラインではできません。規定に則り、必要な機器、空間が確保された場所でリアルな実施をしなければなりません。しかし一方で、オリーブオイルのコンテストの審査はリアルまたはオンラインでも可能です。なぜなら正式なパネルテストではないので、国際オリーブ評議会の規定を順守する必要がないのです。

ONAOO https://onaoo.it

ひとことポイント

パネルのメンバーになるには、テイスター養成講座を受け、テストにパスすることが大前提。ONAOOではレベル1、そして二年かけてレベル2の講座を受講、テイスターになるには合計で3年を要する。レベル1を受講する人の数はかなり多いが、レベル2に進む人は格段に減る。私が受講した時は、私ともう一人を除いて、全員がオリーブオイルの生産者だった。パネルのテイスターを目指すというより、業務に生かすためにオリーブオイルの知識、テイスティングのテクニックを習得するためらしい。このように必ずしもパネルの構成員を目指す人ばかりでなく、オリーブオイルに関わる、関わりたいと考えている人たちも多く、onaooによれば、インポーター、飲食店関係者、ジャーナリストなど受講者はさまざまである。

text・translation:池田愛美 Ikeda Manami
ONAOO所属プロフェッショナル・オリーブオイル・テイスター

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