アルカンアカデミー第3回 トップシェフに学ぶ「ショコラトリー・ド・オペラ」チョコレートレシピ


2022年10月12日、40年以上にわたり、日本における欧州の食文化を支えているアルカンが、食材を通じてシェフの交流、技術の伝承、レストランの発展のために行われるアルカンアカデミーの第3回が、ショコラトリー・ド・オペラの「セカンシア」シリーズをテーマに、CEOのニコラ・ド・ロワジー氏とアジア・パシフィック担当のポール氏、そして講師にブロンディールの藤原和彦シェフを招いて行われた。

去る10月12日、東京・水天宮前の「ターブル・ドート」(アルカンがプロデュースしたプロユースの本格的なキッチンy&ダイニング)で、「第3回アルカンアカデミー」が開催された。今回は10人のパティシエたちをゲストに、「ブロンディール」のオーナーシェフ、藤原和彦氏を講師に迎え、ショコラトリー・ド・オペラのクーベルチュールチョコレート、「セカンシア」シリーズを使ったクリスマスがテーマのアシェットデセールと、汎用性の高いお菓子の2品のデモンストレーションが行われた。
さらに本国フランスからもCEOのニコラ・ド・ロワジー氏とアジア・パシフィック担当のポール・グアリノ氏の2人が来日。オペラのチョコレートを紹介したほか、ゲストからの熱心な質問にも直接答えるという貴重な場となった。

左からショコラトリー・ド・オペラ アジア・パシフィック担当のポール氏、今回講師を務めたブロンディールのオーナー、藤原和彦シェフ、ショコラトリー・ド・オペラ CEOのニコラ・ド・ロワジー氏。
左からショコラトリー・ド・オペラ アジア・パシフィック担当のポール・グアリノ氏、今回講師を務めたブロンディールのオーナー、藤原和彦シェフ、ショコラトリー・ド・オペラ CEOのニコラ・ド・ロワジー氏。

ショコラトリー・ド・オペラは1995年に、代々クーベルチュールチョコレートを作ってきた家庭の3代目、オリヴィエ・ド・ロワジー氏によって設立。現在は4代目のニコラ氏が後を継ぎ、忠実に伝統を受け継いでパティシエたちに向けて商品を作りながら、一方で様々な革新を行っている。その筆頭が2016年に発表され、翌2017年にシラ展示会でイノベーション賞を受賞した「セカンシア」シリーズだ。
通常の強い力で一気に手早く仕上げる一次焙煎のみの手法では、焙煎によるアロマが突出し、アロマバランスの不均衡が起こる。それに対して「セカンシア」は、メイラード反応を研究し、カカオの焙煎の時間と温度を見直すことで、カカオの持つフルーツのアロマ、発酵によるアロマとのバランスを復元し、それぞれのカカオのテロワールが持つ典型的なフレーバーを最大限に引き出すという、世界で唯一の新しい焙煎方法だ。
グァテマラ産フォラステロ種を使った、発酵とカカオ豆そのものの香りが感じられシトラスやベリー系の風味が特徴の「アルタパズ73%」、ジャマイカ産トリニタリオ種を使った、バニラのやさしい風味にハチミツとペカンナッツのアロマが特徴で余韻の長い「ジャメイヤ73%」、グァテマラ産とマダガスカル産のクリオロ種とフォラステロ種をブレンドした、パワフルな香りと独特の風味がありローストナッツのアロマが広がる「ヴィブラート70%」の3つがラインナップされている。

デモンストレーションは「セカンシア」シリーズの3種のクーベルチュールチョコレートを使った「テリーヌショコラ」からスタート。まずはアルタパズ73%に合わせるイチジクの赤ワイン煮からだ。こちらはドライイチジクに水と赤ワイン、バニラ、レモン汁、そして酸味のないイチジクを補完するためにフリーズドライのフレーズ(センガセンガナ種)をホールで加え、水分が完全になくなるまで煮詰める。そして少し実の食感が残るくらいのペーストにして型に入れる。
続いてヴィブラート70%と合わせるプルーンのコニャック漬け、そして最後は独特の風味が強く最もパワフルなジャメイヤ73%に、それに負けないくらい強い味わいのアプリコットを合わせる。バターを塗ったアプリコットをオーブンで焼いて、これをペーストにして型に入れるというのは他の2つと同様だ。

アプリコットには溶かしバターを塗り、乾燥させたタヒチのバニラを使ったシュクレ・バニーユを振りかけてオーブンで焼く。
アプリコットには溶かしバターを塗り、乾燥させたタヒチ産バニラを使ったシュクル・バニーユを振りかけてオーブンで焼く。
ドライイチジクは水分が完全になくなるまで煮詰め、ミキサーにかけて少し食感が残るくらいのペーストに。
ドライイチジクは水分が完全になくなるまで煮詰め、ミキサーにかけて少し食感が残るくらいのペーストに。

ベースとなるテリーヌは、3種とも同じレシピで用意。分離しないよう温度や順番に気をつけながら材料を泡だて器で混ぜ、型に入れてオーブンで焼き上げる。
こちらは季節に合わせて展開できる汎用性の高いレシピとして紹介され、藤原シェフは「今回はジャメイヤとアプリコット、ヴィブラートとプリュノー、それぞれ合うものを組み合わせたが、それぞれお店で使っているフルーツがあるだろうし、バリエーション増やしても」と提案。
また、ロワジー氏は「セカンシア」シリーズについて「フルーツ、特に酸味のないものと合う」「クリエイターのイマジネーションで新しい組み合わせを生み出してほしい」「一番は単体で使っていただくのが良いと思うので、フレーバーを加えるならば1つが良い」と話してくれたが、奇しくもその通りの、チョコレートごとに異なるフルーツを合わせたテリーヌのプレゼンテーションとなった。

湯煎で溶かしたチョコレートに、バター、グラニュー糖、生クリームと全卵を混ぜたもの、そして保湿と日持ちを長くするためのトリモリーヌを順に混ぜていく。
溶かしたチョコレートに、バター、グラニュー糖、生クリームと全卵を混ぜたもの、そして保湿と日持ちを長くするためのトリモリーヌを順に混ぜていく。

アシェットデセールはクリスマスをテーマに、メインの後にも食べられるような軽いムースで、かつパティスリーでもそれ単体で食べられることを意識して、色々な食感と味のバランスを調えるように作った、という。
使用したのはヴィブラート70%。ジャスミンライスを炊いたリ・オレの余熱でチョコレートを溶かし、これにクリームを合わせてグロゼイユ、フランボワーズ、そしてヌガティーヌ・オ・キャラメルをサンド。これにグラニュー糖をまぶしキャラメリゼして土台にし、ディスク状のキャラメル、スプーンで成形したムース・オ・ショコラ・ヴィブラートを重ねる。周りに流し込んだのはオレンジ風味のキャラメルソースだ。こちらはグラニュー糖をキャラメリゼし、半量になるまで煮詰めた牛乳と生クリームで、クレーム・アングレーズを炊きいて裏漉し、そこにオレンジのジュースとゼスト、そしてグラン・マルニエを加えて仕上げたものだ。
ここで藤原シェフは、フランス時代に学び店でも多用しているという、生クリームだけを煮詰めてムースにしたり、牛乳と半々のクレームドゥーブルでタルトフランベに塗ったりといった生クリームの使い方を披露してくれた。
最後にグロゼイユと飴細工を飾り、完成だ。

ムラングイタリエンヌはチョコレートの味を活かすため、そしてデセールで軽くしたいのでムラングイタリエンヌ“キャラメル”で。苦みが強くなってチョコレートの味を殺してしまわないよう、うっすら金色になるくらいに留める。
ムラングイタリエンヌはチョコレートの味を活かすため、そしてデセールで軽くしたいのでムラングイタリエンヌ“キャラメル”で。苦みが強くなってチョコレートの味を殺してしまわないよう、うっすら金色になるくらいに留める。
チョコレートにクレーム・アングレーズ、生クリーム、ムラングを、泡を殺さないように軽い状態で仕上げ、バットに移して冷蔵庫で休ませる。
チョコレートにクレーム・アングレーズ、生クリーム、ムラングを、泡を殺さないように軽い状態で仕上げ、バットに移して冷蔵庫で休ませる。
ジャスミンライスを牛乳で炊き、ヴィブラートを余熱で溶かして混ぜたリオレ・ショコラ。これにクレーム・パティシエールを合わせて土台にする。
ジャスミンライスを牛乳で炊き、ヴィブラートを余熱で溶かして混ぜたリオレ・ショコラ。これにクレーム・パティシエールを合わせて土台にする。
食器協力:たち吉

3時間という長丁場ながらもあっという間に過ぎた今回のアルカンアカデミー。最後にショコラトリー・ド・オペラの2人、ロワジー氏は「チョコレートも合わせた素材も、どちらの主張が勝つこともなく、完璧な組み合わせだ」、グアリノ氏は「強いチョコレートの層と甘い層のバランスが取れていてとてもよいバランス。クリスピーだったりクリーミーだったりテクスチャーにおいてもフレーバーにおいても良くバランスが取れている。キャラメルの濃淡もとても美味しい」と感想を述べ、Congratulation!と藤原シェフを称えた。そしてオペラのチョコレートを愛用するゲストのパティシエたちと交流を深め、会場を後にした。

Text:小林乙彦(料理王国編集部)・photo:依田佳子

関連記事


SNSでフォローする