多文化が共生するアメリカの大都市ニューヨーク。世界の最先端を行くこの街で活動するライター&プロデューサーの小松優美さんが、美食の最新情報をレポート。今回はニューヨークでいま注目を集める日本人フレンチシェフ、長江充展氏が今年3月に開いた「l’abeille」について。
パリと比較してニューヨークでは、和食以外のジャンルで活躍する日本人シェフの層は決して厚くない。
フレンチのシェフとしてこの地で成功した日本人といえば、かつてフォーシーズンズホテルにあった「L’Atelier de Joel Robuchon」でエグゼクティブシェフを務めた須賀洋介の名が上がるだろうか。
あれから10年以上が経ち、ゆっくりとだが、ジャパニーズ・シェフの活躍が目立ってきている。
なかでも注目は長江充展氏だ。
リヨンの辻調グループフランス校で学び、「Régis et Jacques Marcon」での修行を経て2008年に東京の「Joel Robuchon」に入店。モダンフレンチのエスプリに触れながら、パリの「e.t.c.」などで経験を積み、2017年にはニューヨークへ。チェルシーの「L’Atelier de Joel Robuchon」で働いた後、ロブション出身のアラン・ヴェルゼロリのコンテンポラリーフレンチ「Shun」でも活躍。
ロブションの名に導かれるようにキャリアを重ねてきた氏だが、この春にはシェフとして独立を果たした。
富裕層が暮らす閑静なトライベッカにある「l’abeille」は、ベルベッドのシートを配したインテリアが都会的で、いかにもニューヨークのフレンチレストランといった印象だ。
今まで長江氏が働いてきたファインダイニングとは一線を画し、ビストロノミーをコンセプトにくつろいだ空間で四季の皿をいただける。
オマール海老や小鳩、鴨を用いたクラシックなレシピも、ここでは季節ごとに調理法が変わり、旬の食材を組み合わせては刷新。フレンチらしさを踏襲しながらも、フレッシュな解釈を楽しむ若きシェフの勢いが感じられる。
フレンチワインに特化したワインプログラムは新進ワインメーカーによる手頃なボトルからロマネ・コンティまで幅広く、料理とのマリアージュを存分に楽しませてくれる。
この店の成功から派生して、若い日本人シェフたちの活躍の場が増えることに期待したい。
l’abeille
HP https://www.labeille.nyc
Instagram @labeille.nyc
text:小松 優美