渡邉卓也のパリ通信 第1回 コロナ禍と政情悪化で変わる、パリの飲食店のこれから

渡邊卓也のパリ通信 第1回 コロナ禍と政情悪化で変わる、パリの飲食店のこれから

世界的にコロナが終焉を迎えて、我々の生活も日常に戻りつつあるなか、次なる問題はウクライナ情勢による食材の高騰、輸出入の停止、輸送の高騰問題です。特にフランスでも植物油、小麦粉などが高騰しています。それに伴い、食材全体が高騰の傾向にある現状です

観光客やビジネスマンの移動はフライト時間が延びた、という問題はあるものの、海外への移動自体は比較的にスムーズになりました。ですが、海外からの食材輸出入の問題、特にストップや輸送に時間がかかり、コストも高騰。その締めつけがサプライヤーや飲食店、消費者にまで影響が出ているのが実情です。
EUでは日本からの水産物の輸入は無いので比較的影響は少ないですが、戦争による値上げの影響で全体的にコストアップが加速している状況ではあります。

例えば、前述したように小麦粉と食用油が高騰していますが、特に油に関しては一時的にサプライヤーからスーパーでも買えない状況になりました。今は購入可能ですが、4€から5€ほど価格がアップしています。また乳製品、肉、フォアグラなどもアップしました。特にフォアグラはキロ単価で10€〜15€、お肉類も牛肉や仔羊はキロ単価で4€程アップしました。

渡邊卓也のパリ通信 第1回 コロナ禍と政情悪化で変わる、パリの飲食店のこれから
渡邊卓也のパリ通信 第1回 コロナ禍と政情悪化で変わる、パリの飲食店のこれから

これらの高騰した価格がこれからの〝通常〟になると予想されるので、今後、レストランの提供価格も変動すると思われます。使える食材が限られるレストランが増えて、メニューのプライスを上げざるを得ない状況になり、なおかつ必然的に料理内容を変える事が求められてゆく、と予想しています。飲食店にとっては、仕入れ先の生産者や食材の新しいルートの確保が必要となるのです。それに備えて食材探しや生産者を訪問するシェフの行動には今後、注目です。

また、こうした新たな地方、または違う国からの仕入れを模索する必要があるのはもちろん、食材のポテンシャルなどの〝特別感〟が必要とされる時代になると予想されます。
食材が不足する分、手間を掛けて仕込みをし、コストを抑える事も選択肢ではありますが、コロナ禍で外食産業からの人員離れ、海外での労働も懸念されているのが実情。
人不足、労働時間はどのレストランでも問題になっています。

今まで以上に大変な状況ではありますが、みんな同じ条件ですのでいち早く対応し、ベースは変えず新しい事にチャレンジする事が解決策だと思っています。コロナをも乗り越えて来たレストランはそのアイデア、経験を再び活かすシチュエーションが来たと思えば、さほど問題では無いと感じています。

今後10年を見据えて、これを機に新たに生まれ変わるレストラン、またニュースタイルのレストランが出来ると思っています。次回はこうした現状を踏まえたシェフたちの動向をお伝えします。

渡邉卓也
1976年、北海道生まれ。2013年にフランス・パリに鮨と日本酒を楽しめる店「JIN 仁」をオープン。地産地消をコンセプトに掲げ、フランス近郊で獲れる魚をメイン食材に使用している。2014年にミシュラン1つ星獲得。

text・photo:渡邉卓也

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