地中海沿岸各地で、さまざまな形で食べられているズッパ・ディ・ペーシェ(魚のスープ)。その中でもイタリアを代表する一品が、リヴォルノ発祥の「カッチュッコ」だ。
そのユニークな名称の起源は、自由港として栄えたメディチ家統治下の16世紀あたりに、おそらくトルコからもたらされた小魚のスープ「ククット」であると伝えられ、漁師が売れ残った魚介を煮込み、日常的に食べ継がれてきたものだという。
現在では、家庭ごとにカッチュッコの味があるほどの庶民料理だが、材料もレシピも千差万別であり、確たる基本レシピが存在していなかった。
そんなリヴォルノ名物の現状を憂え、リヴオルノ・カッチュッコ協会 Associazione del Cacciucco Livornese(アッソチャチィオーネ デル カッチュッコ リヴォルネーゼ)の発足に踏み切ったのが、地元の食ジャーナリスト、クラウディオ・モッロと「リストランテ・アラゴスタ」のオーナーシェフ、ミケランジェロ・ロンゴだ。彼らが提唱するのは「21世紀のカッチュッコ」。従来のレシピには、大量のトマトやビネガー、ワインを入れて長時間煮込む、ヘビーなものが多く、食のライト化が進む現代では敬遠されがち。そこで同協会では、近海鮮魚の旨味を生した、モダンなレシピを提案している。
さて、カッチュッコの食べ方だが、たっぷりの魚介を堪能する一品料理ゆえ、前菜やプリモは御法度。食後は、ラム酒、砂糖とレモンピールに熱々のエスプレッソを注いだリヴォルノ風パンチ「ポンチェ・アッラ・リヴォルネーゼ」で締めれば完璧である。
ベースはソッフリットとブロデット。
10種前後の魚介を大胆に、デリケートに煮込んでゆく。
迫力の盛り付けでもやすやすと平らげてしまう旨味に満ちた味わい。
材料(4人分)
ブロデット※
セロリ…1本
ニンジン…1本
タマネギ…1個
塩…適量
ソッフリット※※
エクストラヴァージンオリーブオイル…50ml
タマネギ…1個
赤トウガラシ(みじん切り)…小さじ1
セージの葉…4~5枚
トマトペースト…100g
ニンニク(みじん切り)2片
魚介
ホウボウ…2尾
カサゴ…2尾
ハゼ…2尾
(魚介はヒメジ、ウナギ、タラなど近海魚であればいずれでもよい)
タコ…200g
コウイカ…200g
ホシザメ…200g
シャコ…4尾
クルマエビ…4尾
注)
※ブロデットはニンジン、タマネギ、セロリなどを基本に、魚または肉を加えてだしをとるイタリア版ブイヨン。
※※ソッフリットは、基本的にみじん切りにしたニンジン、タマネギ、セロリをエクストラヴァージンオリーブオイルで炒めたもの。
作り方
text by Michiko Ohira photographs by Masakatsu Ikeda
本記事は雑誌料理王国第186号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第186号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。