イタリア料理技術講習会 by 鈴木弥平氏 スーゴディカルネの魅力! 〜洗練された前菜、パスタ、メインを学ぼう〜

2022年7月25日(月)、東京・南麻布の「フジマック株式会社」本社セミナールームで、「ピアット スズキ」の鈴木弥平シェフによる月曜シェフ塾「イタリア料理技術講習会」が開催された。 今回のテーマは、「スーゴディカルネ」

「月曜シェフ塾」は、フレンチやイタリアンを中心としたプロの若手料理人、ホテル勤務者などを対象にした、低価格で調理技法を学べる試食もできる料理講習会だ。講師は、業界を代表する高い見識と調理技術を有する一流シェフ。レストラン業界の休みが多い月曜日を基本に開催している。

2022年7月25日(月)、東京・南麻布の「フジマック株式会社」本社セミナールームで、「ピアット スズキ」の鈴木弥平シェフによる「イタリア料理技術講習会」が開催された。イタリア料理技術講習会としては数年ぶりの開催。講師も今のイタリア料理界を牽引する鈴木シェフとあって、参加者はイタリアンの料理人にとどまらず幅広い。今回のテーマとなった「スーゴディカルネ」は濃縮した肉の出汁で、イタリア料理ではソースのベースとなるものだ。「フランス料理のフォンドヴォー同様に、スーゴディカルネもあるとないとでは料理の幅が全然違ってきます」と鈴木シェフは話す。

まずは、ベースとなる「スーゴディカルネ」から。ニンジン、タマネギ、セロリは、一度焼くのがポイント。これらの野菜とホールトマト(缶詰)に、きちんと脂抜きした仔牛の丸骨と仔牛のスジを加えて、鍋で煮る。煮詰めては水を足し、煮詰めては水を足すという作業を繰り返すうちに、色がついてくる。「色が薄いほうがよければ、煮詰めて水を足す作業を少なくすればいい。煮詰めて水を足す作業で調整して、好みの色や味わいにしてください」。あとは、漉して透き通った感じになれば完成だ。「この段階で肉や野菜を焼いた香りがスープに移っているので、この状態で保存をします。僕は透明になるまできちんと漉すことを大切にしています。こうすると保存が利きます」。

イタリア料理技術講習会 by 鈴木弥平氏 スーゴディカルネの魅力! 〜洗練された前菜、パスタ、メインを学ぼう〜
イタリア料理技術講習会 by 鈴木弥平氏 スーゴディカルネの魅力! 〜洗練された前菜、パスタ、メインを学ぼう〜

続いては、スーゴディカルネを使った前菜の「ボタン海老のコンソメジュレ」だ。
まずは一晩水に浸した白インゲン豆を、鶏でとったブロードとタイムと一緒に炊き、柔らかくなったら塩、オリーブオイルを加えてピューレにする。ブロードにスーゴディカルネと塩を加え、ジュレをつくる。あとはグラス状の器に、白インゲン豆のピューレ、昆布締めにしたボタン海老、スーゴディカルネとブロードのジュレを重ねる。最後に、ディルやセルフィーユ、シブレットを飾れば完成だ。
「スーゴディカルネで味や香りをちょい足しすることで、ジュレの風味に深みが出ます」。白インゲンのピューレとジュレ、昆布締めしたボタン海老が絶妙のハーモニーを奏でる前菜だ。

イタリア料理技術講習会 by 鈴木弥平氏 スーゴディカルネの魅力! 〜洗練された前菜、パスタ、メインを学ぼう〜
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続くパスタは、「鶏のとさかと内臓のパスタ」。「チブレオ」と呼ばれるフィレンツェの名物料理だ。
まずはとさかをブロードで1時間炊く。カットしたレバーとハツをソテーしてブランデーを加え、アルコールが飛ぶまで火にかける。鍋にソテーしたレバーとハツ、炊いたとさかを入れ、ソテーオニオン、トマトソース、スーゴディカルネを加えて煮たソースを、茹で上げたパスタにからめ、オリーブオイル、パルミジャーノレッジャーノ、イタリアンパセリを加えてよく混ぜ合わせ、盛り付ける。
「パスタにからめるソースにスーゴディカルネを入れることで、色や趣が変わり、味に深みが出ます」。確かに、コクと深みのあるソースがパスタにしっかりからまり、美味しい。

イタリア料理技術講習会 by 鈴木弥平氏 スーゴディカルネの魅力! 〜洗練された前菜、パスタ、メインを学ぼう〜
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イタリア料理技術講習会 by 鈴木弥平氏 スーゴディカルネの魅力! 〜洗練された前菜、パスタ、メインを学ぼう〜

最後は「豚ロース肉 カチャトラ風ソース」。イタリアでは羊やうさぎを使うことが多いが、今回は豚ロース肉を使った。
まずは豚ロース肉をローストする。
「ここで大切なのは、仕上がり具合や食感、香りをどのようにしたいかをあらかじめ考えておくことです。僕の場合は、240℃で2分半焼きます」。
フライパンにスライスしたニンニク、ローズマリー、オリーブオイルを入れて火にかけ、ニンニクが少し色づいたら余分なオリーブオイルを取り除き、アンチョビ、マッシュルーム、赤ワインビネガー、ブロード、スーゴディカルネ、イタリアンパセリ、バターの順に加え、ソースをつくる。ローストした豚ロース肉とソース、プレディパターテ(イタリア風チーズ入りマッシュポテト)を皿に盛り付ければ完成だ。
「ソースに入れたスーゴディカルネは肉の旨みを足す意味があります」。旨みをギュッと詰め込んだ肉は味わい深く、ソースやプレディパターテとの相性も抜群だ。

イタリア料理技術講習会 by 鈴木弥平氏 スーゴディカルネの魅力! 〜洗練された前菜、パスタ、メインを学ぼう〜
イタリア料理技術講習会 by 鈴木弥平氏 スーゴディカルネの魅力! 〜洗練された前菜、パスタ、メインを学ぼう〜
イタリア料理技術講習会 by 鈴木弥平氏 スーゴディカルネの魅力! 〜洗練された前菜、パスタ、メインを学ぼう〜

試食として提供される料理を、じっくり味わったり、写真に収めたり……。鈴木シェフのテクニックや理論を確認するよう試食と向き合う参加者たち。

「塩は点と点がつながって初めて塩味となる。塩を入れないで茹でたパスタの料理は美味しくない。パスタにも塩、ソースにも塩、付け合わせにも塩を加え、それがひと皿のなかでつながって初めて美味しい塩味となる」
「アンチョビのような塩蔵物で塩分を補うと、旨みや深みが増す」
「ひと口に酢といっても、味を引き締める酢もあれば、酸味をつけるための酢もある」
等々……。

経験や技術に裏打ちされた鈴木シェフの言葉は、参加者の心に響いた様子だった。

text:山内 章子

Sautoir Club/月曜シェフ塾 

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