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伝統酒蔵が生み出した新たな国産ウイスキー 前編


日本各地でその土地その土地に愛される味わいを醸してきた、日本酒や焼酎の蔵元。今回ご紹介するのは、そんな蔵元数社が協働して生み出した「Whisky The Takasago 2022」です。コンセプトは「時・場所・伝統技術そして、思いが融け合うウイスキー」。その開発の裏側と味わいの魅力について、お伝えします。

ブレンダーと聞くと、ウイスキーのブレンド技術者をまず、思い出します。ですが、実は日本酒の蔵元でもブレンド技術は必要不可欠なもの。そう語るのは、今回ご紹介する「Whisky The Takasago 2022」のブレンドを担った富士高砂酒造(静岡県富士宮市)の山本晃雅副社長。例えば、一定の「銘柄の味」を保つため、新酒にあえて貯蔵しておいた酒を加えたり、あるいはこうした酒を数種類ブレンドすることで新商品を作ることも、と言葉を続けます。言われてみれば確かに、毎年変わる気候やそれに伴って変わる米質に左右されることなく、安定的な味わいを作る技術は日本酒にも必要なもの。

けれどもなぜ、天保元(1830)年創業の老舗蔵がウイスキー作りにチャレンジしたのでしょうか。

「数年前から、日本酒造りの技術を生かした新しい酒づくり挑戦したいという気持ちがありました。より多くの人に日本酒を知ってほしい、という思いがその原点です。そのために自分達の蔵に眠っている資産がないか、同じ思いを持つ11の酒蔵と一緒に考えはじめたのが、きっかけでした」

そうして、各蔵から新しい酒造りに使える「資産」が集まりました。黒部の軟水で銘酒を醸す富山の銀盤酒造に眠っていたのは、25年間樽熟成されたスピリッツ。これは、かつてのオーナーがスコットランドのウイスキー蒸留所を訪ねたことをきっかけに、自分達で試験的に作ったものだったそうです。そして熊本で伝統の球磨焼酎を醸す常楽酒造では、3年樽熟成させたスピリッツが見つかりました。

「ブレンド技術と上質なスピリッツは既にある。ならばもし、日本酒や焼酎の作り手がウイスキーを造ったらどうなるのか? そんな思いから、モルト原酒探しをスタートしました」

国内各所で探した結果、富士高砂酒造のお隣、富士市の富士かぐや蒸留所で良質なモルトウイスキーを発見。オーク樽とシェリー樽で眠っていた2種類のモルト原酒で、富士高砂酒造と同じ富士山の伏流水で仕込まれたものでした。では、これをどのようにブレンドし、どのような味わいにするのか。

「余韻に米の優しい甘みを感じるようなイメージを目指しました。樽由来のバニラ香と熟成によるうま味のバランスがよく、クセのない柔らかさを感じる酒質。口に含むとふくよかさが広がり、心地よい余韻が感じられるように、ブレンド比率を変えては何百回も試作しました」

そうした試行錯誤の末に完成し、4月から発売になった「Whisky The Takasago 2022」。次回はその味わいや印象について、トップシェフから届いたコメントをお伝えいたします。

■富士高砂酒造
https://fuji-takasago.com/

text:奥 紀栄 (料理王国編集部)

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